令和6年能登半島地震:日本災害歯科支援チーム(JDAT)に参加
<令和6年能登半島地震:日本災害歯科支援チーム(JDAT)兵庫に参加して>
歯科口腔外科 :足立 了平 / 檜山 弥侑
令和6年元旦に能登半島で発生した地震は、死者241人、関連死15人、行方不明19人という当初の予想を遙かに超えた甚大な災害になりました。
発災直後から災害派遣医療チーム(DMAT)や災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)、日本医師会の日本災害医療支援チーム(JMAT)などが被災地に入り健康被害に対応しています。
歯科においても、1月13日に石川県歯科医師会から日本歯科医師会に向けて支援要請があり、日本災害歯科支援チーム(JDAT)が組織され18日より活動を開始しました。
ときわ病院からはJDAT兵庫の第1陣として足立、檜山が5日間の日程で歯科保健支援活動に参加しました。ときわ病院では、東日本大震災(2011)、熊本地震(2016)においても歯科医師や看護師による支援チームを被災地に送ってきました。
災害時になぜ歯科保健支援が必要なのでしょうか。それは災害関連死の予防には口腔ケアなどの歯科保健支援が有効だからです。
災害関連死で最も多い疾患は約1/3を占める肺炎です。その多くは口腔内細菌の気管への誤嚥によって起こる誤嚥性肺炎です。大規模災害時において、肺炎による高齢者の死亡を減らすためには口腔ケアが欠かせません。
何よりも、「口腔ケアは命を守るケア」であることを被災者自身に理解してもらうことが最大の健康被害対策なのです。
(足立記)
JDATは2022年に創設され、今回の地震が初めての派遣になります。
私たちはJDAT兵庫の記念すべき第一陣として、1月26日から28日まで輪島市街地および近郊において支援活動を行いました。
避難所を回り歯科関連支援物資の提供や災害関連死の原因疾患である肺炎予防のための口腔ケアの重要性について指導および義歯の紛失などに例えられる口腔内に問題を抱えている避難者のスクリーニングなどを行いました。
道路が寸断されており被災地域に入るまでに相当な時間を要するうえ通行できない路地も多く、避難所への支援も困難なものがありましたが、3日間で計8か所の避難所を訪問しました。
被災者の方々にお話を伺うと、避難所によって支援物資の配給に差があること、支援物資は届いてはいるもののその存在を知らない避難者が多いこと、配布された口腔ケア用品の使用方法がわからなかったり誤嚥性肺炎に口腔ケアが有効であることを知らなかったりする被災者が多いことなど多くの課題が山積みでした。
研修医として今回の災害支援に参加させていただいたことは非常に貴重な経験であり、上記のような課題を目の当たりにし災害医療に対する認識や意識も大きく変化したように思います。
また、自身も被災されながら地域のために休みなく尽力されている地元の先生方の献身的な姿を拝見し、尊敬の念を抱きました。
一歩避難所を出れば、崩壊した建物や地割れしたままの道路など今回の地震の大きさを痛いほど感じさせられます。
支援期間中にも何度かの余震がありました。
こうした環境下での被災者の方々の精神的・身体的疲労は想像をはるかに上回るものであり、被災地における医療支援は必要不可欠なものでありながら、現地の方々にとっては微々たる支援であることを痛感させられる5日間となりました。
(檜山記)